数あるパキポディウムの中でも、その丸々と膨らんだ愛嬌ある形状から人気を集めているグラキリス(Pachypodium rosulatum var. gracilius 和名:象牙宮)。
かつては入手が困難な品種でしたが、昨今のビザールプランツブームにより現地球(自生地マダガスカルで成長した株のこと)が大量に輸入され、いまでは園芸店やオークションで容易に購入できるようになりました。
グラキリスの育て方はサイトやブログで広く紹介されるようになり、ちょっと変わった植物を育ててみたいという方にはうってつけとも言えるのですが、大きく形のよい株は 5 万円以上の値がつくことも。せっかく高い輸入株を手に入れたとしても冬を越せずに枯らせてしまうリスクもあるので、種子から育ててみるというのはいかがでしょうか?
特別な温室などのない一般家庭の環境におけるグラキリスの実生記録をまとめました。これから実生に挑戦してみたい、という方は是非ご参考にしてください。
パキポディウム・グラキリスの実生記録 2016年4月~
2016 年の 4 月にグラキリスの種子を10 粒購入したところから実生記録を開始。マダガスカルに自生する植物を、日本の特別な栽培環境もない一般家庭で栽培できるか試してみたいという好奇心から始めました。
初回は、パキポディウムの種子の入手方法から播種の手順、用いた用土をご紹介しています。
10 蒔いた種子のうち 6 つが発芽、播種から 1 ヶ月後まで。双葉のあとの本葉が生え始めています。5 月の平均気温は 20 度前後とまだ肌寒く日照時間も短いため、日中は屋外で夜は室内で植物育成ライトを当てていました。
6〜8 月はとにかく可能な限り日光に当てることに苦心。30 度半ばの猛暑日に直射日光に晒しても発芽した 6 株すべてが葉焼けを起こすこともなく成長。しかし縦に伸びるばかりで、一向に丸くならないことに悩み続けました。
夏の終わりには幹も膨らみを見せ、個体差もはっきりとしてきました。10 月に入り気温が下がり始めると、葉が黄色く変色し落葉する株が見られました。
2016 年の年末まで。一時は落葉した 1 年目のグラキリス達でしたが、室内に取り込み西日を浴びさせると葉が生え揃ってすくすくと成長。夏は縦に伸びるばかりだったものが、秋以降は徐々に幹が太り始めるように。
パキポディウム・グラキリスの実生記録 2017年
グラキリスの実生 2 年目。6 株が冬を越すことができましたが、不手際もあり 3 株が脱落。1 年目はひょろひょろに育ったため、やはり都内ベランダでの栽培は難しいのか・・・と考えていたところ、夏から幹が太くなり始めグラキリスらしさが出てきました。
2 月、真冬の時期でも室内管理で葉を落とすことはありませんでした。冬の間もわずかに成長を見せたものの、冬眠せず日照が不足した状態ではより細くなってしまわかないかと気を揉みました。
6 株全部が越冬できたものの、5 月になり一番ひ弱だった株の根元が腐り脱落。残った株も葉が黒ずみ落ちたり、暖かくなったことでカイガラムシが発生したりと試練を迎えます。
また、播種した当初からの「さし芽種まきの土」をやめて小粒の赤玉土を主体に、軽石などを混ぜた水はけの良い用土へと全株植え替えを行いました。
夏・秋と順調に太ってきたグラキリスの実生株。2 年目ということもあり今年も問題なく越冬できるだろうと思っていたところ、管理の不手際があり簡易温室内で 2 株を腐らせてしまいます。温室内の湿度が高い中で水やりをして放置したことが原因だと思います。
残りは 3 株になってしまいましたが、特に 1 つ有望な樹形になりつつあり、ベランダの実生でもここまでできるのだという充実感があります。
パキポディウム・グラキリスの実生記録 2018年
3 年目にして、1 つの株から花芽が出ました。花にエネルギーを使って欲しくないので今年は花芽を切除してしまいましたが、順調な成長を感じる出来事です。3 株がこのまま成長を続けることができれば、受精させ種子を採取できる日もくることでしょう。
パキポディウム・グラキリスの実生記録 2019年
ついに実生を始めてから 4 年目に突入。3 年目は目立った動きがなかったのですが、今年は春になり動き始めると同時に花芽を出したり分頭したりと大忙し。
※本記事は随時更新します