実生株 栽培記録

パキポディウム・グラキリスの実生記録 1 – 2016年4月

Pachypodium Rosulatum Gracilius

パキポディウム・グラキリス By Bernard Gagnon

パキポディウム・グラキリス(和名:象牙宮) は幹の丸々と膨らんだ愛嬌ある形状から、近年特に人気のある塊根植物です。

幹幅がおよそ 20cm を超えていれば 5 万円以上の値がつく事も珍しくない希少種で、そんなに採って大丈夫なのかと心配になるほど大型の現地球(自生地マダガスカルで成長した株のこと)が原産地から次々と輸入されています。

現地球は土の付いた状態で輸入できないという衛生上の問題から抜き苗で日本に輸送されるため、生命力が弱かったり雑な扱いを受けた株は発根しないかちゃんと根付くことが出来ずに枯れてしまいます。一度根付いたとしても、自生地と著しく異なる日本の環境に順応できず冬を越せないケースもあります。

成長の遅いパキポディウムですが、日本国内での実生も意外と難しくないと聞きます。自分で育てた株であれば突然枯らしてしまうリスクも少なく、愛着も深くなること間違いなしです。実生株を育てた後に、現地球に挑戦するのも良いでしょう。グラキリスの種子を入手することができたので、実生に挑戦してみたいと思います。

パキポディウム・グラキリスの自生地は熱帯乾林

Temperature-for -isalo-Madagascar

パキポディウム・グラキリスが自生するインド洋西部の島、マダガスカルのイサロ地方の気温は年間を通して平均最高気温が 30 度を超える熱帯乾林です [ 1 ]World Weather Online – 2000年から 2012年の統計

そのため、グラキリスを発芽させるには気温 20 度以上は欲しいところで、日本で種を播くのであれば 4~6 月頃が望ましく、萌芽してから秋までの成長期は野外の日当たりの良い場所に置き、ある程度成長して、気温が下がってからは室内で管理したほうが良いでしょう。

最低気温が 10 度くらいの環境までは耐えられると言われていますが、現地では 15 度を下回ることは滅多にないため、冬季もなるべく気温を保ってあげたいところです。

種子を入手しよう

近年の珍奇植物ブームで塊根植物がメジャーになってきたとはいえ、グラキリスの種子は一般園芸店などではまず販売されていません。

パキポディウム グラキリスの種子

今回、こちらの種子は遊恵盆栽さんから購入しました。オークションで販売されていることも多く、今の相場は 20 粒で 1,300〜1,500 円ほどでしょうか。国内でパキポディウムの種子を量産している生産者はまだないため、いずれも海外から輸入されていると思います。

個人でも海外から直接購入することは可能で、パキポディウム・グラキリスの種子であれば 50粒で 20ドル(約2,200円)、パキポディウム・ロスラーツムが 30粒で 13ドル(約1,400円)など、国内より安く購入することができます。ただし違う商品が届くなどのリスクがあるので英語のやりとりが不安な方は避けたほうが無難でしょう。

日本へ発送可能なサイトとしては以下などがあります。

  • Rarexoticseeds
    多くの植物・種子・オイルなどを販売しているカナダの業者。種子であれば約6ドルで日本へ発送してくれます。
  • ebay
    世界最大級のネット通販サイトで、希少種を含む膨大な種類の種子が販売されています。ただしあまり信頼できない業者も多く存在するため、 exotic_cactus_collection など評価レートの高いところから購入しましょう。
  • Koehres-Kakteen
    ドイツのサイトですが 100 粒で 12ユーロほど。

種子を蒔く前に

8〜12時間ほど、種子を水につけておくと発芽しやすいと言われています(浸種)。浸種によって発芽に必要な水分を種子に吸収させること、またグラキリスにも当てはまるのか分かりませんが、種子休眠作用のある発芽抑制物質(アブシシン酸)を除去する効果が期待できます。

パキポディウム グラキリスの種子

このとき、種子を水でなく100 倍に薄めたメネデール希釈液に漬けることで発芽を促進できる可能性があります。

または、蒔く前にルートンを種子にまぶす方法もあります。本来ルートンは挿木や球根などの発根を促進させるために使用しますが、種子に対しても発芽促進効果があると言われています。

4月24日 – 種を蒔きます

種まきセット

「種まきハウス」と「さし芽種まきの土」

今回は、DAIM の「種まきハウス 9穴トレー」、花ごころの「さし芽種まきの土」を使用しました。

ある程度成長したら水はけの良い用土が望ましいのですが、種まき用としてはバーミキュライトや赤玉土ベースに鹿沼土・腐葉土を配合したものがよく使用されているようです。

十分に潅水してから、軽く種を用土に挿すようにピンセットで蒔いていきます。

グラキリス実生

「種まきハウス」の透明カバーは温度・湿度を保つことができ、通風のための穴も開いています。便利!

グラキリスは基本的に乾燥を好みますが、萌芽するまでは水分を切らさないよう、アンダートレイに十分な水を保つようにします。

4月27日(3日目) – 発芽

パキポディウム グラキリス実生

種を蒔いてから 3日目でひとつ発芽しました。ずっと腰水を絶やさず、日中は外の日当たりの良い場所に出しておき、夜は室内に取り込むようにしていました。常時 20 度以上を保つよう注意しています。

また、カビ防止の為ベンレートを水に溶かしたものを与えています。

4月29日(5日目) – 双葉が開いてきました

パキポディウム グラキリス実生

初めに発芽した子の双葉が開いてきました。少し気候が不安定で最低気温が 10 度を下回ることがありましたが、室内でカバーをしているため最低でも 15 度前後をキープできていると思います。

思ったよりも気温が上がらず、5日間で発芽したのは 2/10 と少し不安な出足ですが引き続き様子を見ていきます。

 

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1. World Weather Online – 2000年から 2012年の統計