パキポディウム・グラキリスの基本情報
パキポディウム・グラキリス(Pachypodium rosulatum var. gracilius 、和名:象牙宮)はマダガスカル南西部のイサロ地方に自生する、パキポディウム・ロスラーツムを原種とする塊根植物です。
近年加熱するパキポディウムブームを象徴する人気種で、胴体がボールのように丸く膨らんだユーモラスな樹形が愛らしく、その存在感から「パキポディウムの王様」と呼ばれることも。自生地の乾燥した過酷な環境に適応するため、水分を塊根部(根の部分)に溜めるために肥大しこのような樹形になったと考えられます。
表皮に象の肌のような皺が入っていることから象牙宮という和名があり、海外でも象足(Elephant's Foot)という別称があります。ちなみに、パキポディウムの和名は作家でサボテン研究家の龍胆寺雄氏が名付けた「亜阿相界(ああそうかい)」。
非常に高値で取引されており、2018 年現在も直径 10cm を超える株であれば 30,000 円以上の値で売買されています。樹形がずんぐりと丸く整っていれば、さらに高価な値がつくことも珍しくありません。
パキポディウムに限らず、貴重な環境資源であるはずの動植物が大量に輸出され、悲劇的なほどの環境破壊が続くマダガスカルは 2017 年の統計で 1 人あたりの国民総所得は 4 万円ほどとなっており、188国中182位と世界の最貧国のひとつ。環境保全よりも生活が優先され、現地では種が絶滅するほどの勢いで国外に売れる動植物が乱獲されています。国内で販売されているマダガスカルの植物が輸入される背景も知っておくべきでしょう。
パキポディウム・グラキリスの写真
塊根植物 パキポディウム・グラキリス、恵...(鶴仙園 西武池袋店)
パキポディウム・グラキリスの育て方
パキポディウム・グラキリスは山岳地帯の砂岩断崖や岩周り、岩山の頂上付近といった過酷な環境に自生しています。マダガスカル・イサロは年間を通して平均最高気温が 30 度を超える熱帯地域ですが、6〜8 月の乾季は平均最低気温約 15 度、最低気温は 10 度を下回ります。さらにグラキリスは約 300〜1,000m ほどの標高がある環境に生息しており、パキポディウムの中では比較的耐寒性があると言えます。
日本では気温の高くなる春から秋にかけて成長期を迎えます。乾燥と日光を好むため、できるだけ日当たりと風通しのよい場所で管理します。日本の夏でも直射日光下で育てることができますが、10 度を下回るような寒さには弱いため、屋内や温室で管理します。特に輸入株は冬越しの際は注意が必要で、環境の変化に適応できず初年度の冬に枯らせてしまいがちです。
また、輸入株には日本に来てから 3 年目に枯らせてしまう「3 年目のジンクス」があると言われています。持ち込んだ株が発根し、葉も生えて日本の環境に順応したように見えていても、実際は日照不足などにより塊根にため込まれた栄養が消費され続けて弱っていき、3 年目に力尽きてしまうというもの。できる限りたっぷりの日光を浴びせてあげましょう(室内に置いたり、頻繁に植え替えてはいけません)。
用土
水はけが悪いと根腐れを起こしやすいため、赤玉土など通気と水はけのよい用土をベースとした配合土を使用します。
画像は2年以上栽培している実生株に使用したもので、小粒の硬質赤玉土をメインとし、軽石・さし芽種まきの土・鹿沼土を 6 : 2 : 1 : 1 ほどで配合したものです。パーライトやサボテン用土を配合しても良いと思います。
水やり
自生地のマダガスカル・イサロ地方は雨季(11〜3 月)と乾季(4〜10月)に分かれています。乾季はほとんど雨はふらず、幹に蓄えた水分のみで数ヶ月耐えることができるほど乾燥には耐性があります。
乾燥に強い反面、蒸れや過湿に弱いので鉢内の水分が乾ききってから水を与えるようにします。気温の下がる秋以降は徐々に水やりを減らし、冬場は休眠させるのであれば断水気味に管理します。細根が枯れてしまうのを防ぐため、月に 1 回ほど根を湿らせる程度の水を与えます。
冬季も温室などの気温を保てる環境で管理し休眠させない(落葉しない)のであれば断水する必要はありませんが、鉢内が乾かない状態が長く続くと根腐れしてしまうので、室内であればサーキュレーターを使うなど風通しを良くすることを心がけてください。冬場の水やりは根腐れの危険が高くなるため、細心の注意を払っておこないましょう。
また、同じ用土を使い続けると団粒構造が壊れ排水性・通気性が悪くなるため、適宜植え替えを行うことも必要です。成長に合わせ、2 年に一度は植え替えるようにします。
肥料
春〜秋の成長期に希釈した液体肥料を月に 1 回程度施すか、マグァンプK などの緩効性肥料を用土に少量混ぜ込みます。
あまり肥料を与えすぎると徒長の原因となりぽっこりとした樹形を保てなくなることがあります。すべての植物に共通していることですが、肥料の与えすぎは毒にしかならないため肥料過多とならないように注意してください。
パキポディウム・グラキリスを育てるときに注意したい病気と害虫
病気
糸状菌(カビ)が原因で斑点性病害にかかることがあります。特にカイガラムシが発生した後にかかりやすく、カイガラムシの排泄物を養分として菌が繁殖します。
斑点性病害が発生した場合はベンレート水和剤などの薬剤を散布します。気温の上がる春から初夏にかけて発生しやすいため、予防として事前の散布も有効です。
害虫
風通しが悪く乾燥した状態だとカイガラムシが発生することがあります。カイガラムシは幹や茎に固着し、養分を吸汁するため葉が落ちたり生長の妨げになります。
幼虫であればオルトラン水和剤などで駆除が可能ですが、カイガラムシの成虫は薬剤が効きにくいため、ブラシや爪楊枝などでこすり落とします。
また、カイガラムシの排泄物には糖分が含まれており粘着質で、すす病を引き起こす原因にもなります。カイガラムシを見付けたらすぐに駆除するようにしてください。
パキポディウム・グラキリスの植え替え方法と時期
成長具合を見ながら、鉢が狭くなってきたようであれば気温の高くなる前の 4 月頃、遅くとも 6 月まで(関東基準)に植え替えをします。用土が古くなると栄養がなくなり、団粒構造が壊れて排水性・通気性が悪くなるので少なくとも 2 年に 1 度は植え替えをします。
植え替えは前のものより一回り大きな鉢を使用します。大きすぎる鉢に植えると根に対して用土が多すぎる状態となり、なかなか鉢内が乾かずに根腐れを起こしやすくなるためです。
植え替えの際には根をほぐして古い用土を 1 /3 ほど振い落とし、枯れて変色した根を切り捨てて整理します。パキポディウムの根は切れやすいので無理にほぐさず、固く絡まっている場合はそのままで構いません。
新しい用土には緩効性肥料を少量混ぜ込んでおきます。
パキポディウム・グラキリスの増やし方
4〜7 月に種を蒔いて増やします。種はネット通販で購入することができますが、発芽率は種の新鮮さによるので信頼できる業者や個人から購入するようにしましょう。
3 年目以上の株は夏季に花を咲かせるので、受粉させることで種を採取することもできます。なお、パキポディウムは雌雄同体のため自家受粉も可能ですが、結実する確率が低いという話も聞きます。
パキポディウム・グラキリスの実生栽培記録
温室など特別な設備のない、一般家庭におけるグラキリスの実生記録を公開しています。是非こちらも参照してください。
パキポディウム・グラキリスを楽天で購入する
オンラインショップで販売されているパキポディウム・グラキリスの商品ページです。※外部サイトに移動します
詳細情報
和名 | 象牙宮 |
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分類 | |
学名 | Pachypodium rosulatum var. gracilius |
原産地 | マダガスカル |
特徴 | 非耐寒性 |