コウガイビルという、ハンマーヘッドシャーク(シュモクザメ)のように左右に張り出した頭部を持つ生物をご存知でしょうか。
一見すると平べったい黒いミミズ、あるいはヒルのような、ぬるぬると這って動く生き物です。かなり見た目が気持ち悪いので、ガーデニングをしているときに遭遇しヒヤッとした経験のある方も多いのではないでしょうか。
コウガイビルとは?
コウガイビルの名前の由来
コウガイビルは、頭部の形状がイチョウの葉のような、髷を形作る装飾的な結髪用具である「笄(こうがい)」に似ているところから名付けられました。
じめじめとした湿気のある環境を好み、夜行性で日中に動き回ることはしません。そのため普段はあまり人目につかないのですが、ガーデニングをしていて土を掘り起こしたときに遭遇してしまうことがあります。
「幹細胞」による自己複製が可能
コウガイビルは「ヒル」という名前がつけられているものの、ヒルなどの環形動物ではなくプラナリアの仲間である扁形動物に属します。
そしてプラナリアと同様に、自己複製と様々な細胞に分化する能力のある「幹細胞」が全身に存在しているため、コウガイビルも自己分裂による増殖が可能です。
例えば体を2等分すると、それぞれが失った部分を再生し元の個体が2体に増えるという、驚くべき能力を持っています。動きが緩慢で乾燥に弱い性質でありながら、コウガイビルの仲間が世界中に分布しているのもこの高い再生能力によるものでしょう。
コウガイビルの食性 – ミミズやナメクジを捕食
コウガイビルは肉食でミミズやナメクジ、カタツムリなどを捕食します。獲物に全身で絡みつき動けなくしたのち、腹部の穴から消化液を分泌する器官を延ばし、消化しつつ飲み込みます。
ちなみにこの腹部の穴は口だけでなく肛門の役割も果たしており、不要物を排泄することもできます。
コウガイビルは害虫か?
一般に知られているように、ミミズは土中の有機物などを食べて粒状の糞を排出し土を団粒構造に変える、肥料成分を植物が吸収できるように分解するなど、土壌の改良に大きな役割を担っています。
コウガイビルによる植物への食害はないようですが、ガーデニングをする上で益虫であるミミズを食べてしまう点は困りもの。しかしその反面、食害を与えるナメクジも食べてくれるというメリットもあります。
そう考えるとコウガイビルの存在を一概に良い悪いとは言えないものの、コウガイビルの一番の負の面は「見た目が気持ち悪い」ことにつきます。
人やペットに危害を与える?
コウガイビルは血を吸うヒルとはまったく異なる種類の生物であり、人間やペットに対して噛み付くなど直接的な害を与えることはありません。
日本での生息は未確認だが、毒性を持つ種も
コウガイビルは世界中に 100 種類以上が存在しており、その中にはフグ毒と同じテトロドトキシンを持つ個体もいるとのこと。
ただし日本でよく見かけるのはオオミスジコウガイビル、クロイロコウガイビル、 クロスジコウガイビルなどの毒性を持っていない種です。
寄生虫の一時的な宿主になっている可能性
コウガイビルが捕食するカタツムリやナメクジがの寄生虫の宿主になっている場合、寄生虫が一時的にコウガイビルに移行している可能性があります。
過去には、ふざけてナメクジを食べたオーストラリア人の男性が広東住血線虫に感染、幼虫が脳に入り込んだことで髄膜炎を発症し昏睡状態になった後に亡くなるという ニュース もありました。
ナメクジがついた野菜をよく洗わずに食べても感染する可能性があるということですので、もしコウガイビルを触ってしまった場合は十分に洗い流すべきでしょう。