病気・害虫

家庭菜園の大敵、うどんこ病の原因と対策

家庭菜園を楽しんでいる皆さんは、5 月に植え付けた苗が成長し、収穫を迎える作物も出始めた頃ではないでしょうか。

気温の上昇に伴い植物の活動が活発になるのは良いのですが、同時にうどんこ病の蔓延する時期でもあります。今回はうどんこ病の原因と、治療方法をご紹介したいと思います。

うどんこ病とは

うどんこ病

うどんこ病の症状

うどんこ病とは、植物にカビの菌が感染して葉にうどんの粉を振りまいたような白い粉状の斑点が広がっていく病気のことです。

葉の白くなった部分は光合成をすることができず、次第に葉全体が白くなり枯れてしまいます。植物は葉からの光合成のエネルギーを失うので、結実することができず収穫量が減ってしまったり、最悪の場合は植物自体が枯れてしまうこともあります。

うどんこ病の原因

うどんこ病の原因となるカビ菌は子嚢菌門(しのうきんもん)と呼ばれる高等菌類に分類され、2012 年に発表されたモノグラフ [ 1 ]生物の分類学における、全世界あるいは特定地域に生息する特定分類群の全種を網羅して分類学的に検討、記載した総説論文のこと – Wikipedia では 873 種が数えられています [ 2 ]Taxonomic manual of the Erysiphales (powdery mildews) – Uwe Braun and Roger T.A. Cook , 2012 。

土中や落ち葉の中に生息している菌が風に運ばれ植物などに付着し寄生、増殖します。世界で約 1 万種の被子植物に寄生することが知られています。

菌ごとに寄生する植物が違う

うどんこ病菌は種ごとに固有の植物にしか感染しないという特徴があります。バラのうどんこ病の原因となる菌はバラにしか感染せず、キュウリなどの野菜には感染しません。キュウリに感染する菌は、同じウリ科の植物には感染する可能性がありますが、バラに感染することはありません。

ただし、複数の植物で繁殖可能な種も存在するため、うどんこ病を発症した植物は早期に治療するか隔離した方が良いでしょう。

うどんこ病が発生しやすい時期

うどんこ病菌は高めの気温と低い湿度の環境を好み、生きた植物の葉の養分を吸って繁殖するという特性を持ちます。

おおよそ 18~25度の気温の時期がうどんこ病菌の活動期であり、日本においては 5~6 月、9~10 月頃に多く発生します。気温の最も高い真夏は菌の活動が鈍くなるため症状は広がりませんが、感染を放置しておくと秋頃に菌が活性化してしまいます。

うどんこ病のような症状が出たら

うどんこ病を発症したズッキーニ

特にうどんこ病にかかりやすいズッキーニ。葉は枯れ、葉の裏全体に白い粉が吹いている。

葉の白い斑点を確認したら症状が出た葉を摘み取ります。葉に付いたうどんこ病菌の胞子が風で広がる可能性があるため、摘み取った葉はすぐに捨てるようにしてください。

葉を摘んだ後、他の葉にもうどんこ病の症状が出てしまった場合は植物に菌が寄生してしまっているため、すぐに治療が必要です。

うどんこ病の治療方法

まだ症状が軽い場合は家庭でも簡単に手に入る、重曹や酢を用いた治療法を試してみましょう。

  1. 重曹水を散布する
    症状が軽度の場合は食用として販売されている重曹を 500~1,000 倍に希釈したものを、霧吹き等で症状の出た部位を中心に植物全体に満遍なく噴霧します。植物によっては重曹の濃度が高すぎると薬害が発生するため、濃ければよいというものではないことに注意してください。まずは 1,000 倍程度に薄めたものから始めると良いでしょう。
  2. 牛乳を希釈し散布する
    日本では馴染みの薄い手法ですが、海外では牛乳と水を 1:10 の割合で希釈し、植物に散布する方法が農場や庭師の間で永く用いられてきました。特にバラ、かぼちゃ、ぶどう、ズッキーニに有効性があるとされています。何故牛乳がうどんこ病に効果があるかには諸説あるのですが、一説には牛乳のホエーたんぱく質が日光に晒された際に生成される酸素ラジカルが菌に有害であるとのことですので、晴れた日に散布しないと効果はなさそうです。
  3. 食酢を希釈し散布する
    酢を 30~50倍に希釈し、症状の出た部位を中心に植物全体に満遍なく噴霧します。ただし、酢を根から吸収すると植物が弱ってしまうため、葉の表面と茎の菌を除去する程度で、根に滴るほど大量に散布しないようにしてください。

なお、うどんこ病の原因となる菌は多数あり、それぞれに有効な成分が異なります。例えば、酢と同じくうどんこ病に効果があるとされる竹酢液ですが、キュウリには明確な防除作用が認められたものの、イチゴにはほとんど効果が見られず薬害が発生したという研究報告 [ 3 ]竹酢液によるイチゴおよびキュウリの数種病害に対する防除効果 – 徳島県立農林水産総合技術センター農業研究所 があります。

殺菌剤を散布する

もし重曹噴霧などの治療で効果が見られず、うどんこ病が拡大してしまった場合は、専用の薬剤を用います。

うどんこ病菌ごとに有効な成分は異なり、すべてのうどんこ病菌に対して効果のある薬剤は存在しません。たとえば「ベンレート水和剤」が有効なものは柿、梨、ぶどう、りんご、桃、バラのみです [ 4 ]GFベンレート®水和剤 – 住友化学園芸 。キュウリ、トマト、なす、ズッキーニ等の野菜および観葉植物には「パンチョTF顆粒水和剤」を使用するなど、必ず植物に応じた薬剤を使用するようにしてください。

次ページに、植物ごとに使用できる殺菌剤、忌避剤一覧をまとめていますので参考にしてください。

うどんこ病の予防

購入した苗や土にうどんこ病菌が付着していた場合、発症を抑えるのは困難です。しかし、菌が繁殖しにくい環境を作ることで急激な繁殖を抑え、うどんこ病の被害を最小限に抑えることは出来ます。

  • うどんこ病菌は乾燥を好むため葉水を与えて湿度を保ち、水やりの際はたっぷりと水を与えて胞子を洗い流し菌の飛散を抑える
  • 葉の成長を促進する窒素肥料を控え、余分な茎や葉を摘み取り適度な日照と風通りを確保する
  • うどんこ病は特定の植物でしか繁殖しないため、うどんこ病菌が発症した場所・鉢に異なる植物を植え替える
  • 例年発症するような環境では、予めシーズン前に殺菌剤を散布しておく

うどんこ病は非常に発症しやすく、葉が白くなり枯れて落ちてしまうという厄介な植物の病気です。ただし外見上は初心者でも判断しやすいため、予めうどんこ病に関する知識を持ち有効な対処を早期に施すことで、被害を最小限に止めることが出来る病気でもあります。

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1. 生物の分類学における、全世界あるいは特定地域に生息する特定分類群の全種を網羅して分類学的に検討、記載した総説論文のこと – Wikipedia
2. Taxonomic manual of the Erysiphales (powdery mildews) – Uwe Braun and Roger T.A. Cook , 2012
3. 竹酢液によるイチゴおよびキュウリの数種病害に対する防除効果 – 徳島県立農林水産総合技術センター農業研究所
4. GFベンレート®水和剤 – 住友化学園芸