ブックレビュー『そらみみ植物園』

そらみみ植物園』はプラントハンター・西畠清順氏による植物エッセイ集。世界中に赴き植物の事ばかり考えている著者らしく、日本では馴染みのない珍しい植物を独自の視点で語っています。

ブックレビュー そらみみ植物園

世界各地の植物に対する西畠氏の広い知見とユーモアをたっぷり詰め込んだ本書は、あまり植物に関心のない人でも気軽に読める内容となっています。

リトープスが世界で 2 番目に尻に似ている植物だとか(1番目は何だろう)、ガオクルアと呼ばれる植物の実を食べた女性のおっぱいが必ず大きくなると聞き輸入しようとしたらタイ政府が禁止していたため、似ている別の植物を輸入したところおっぱい好きの花屋がこぞって仕入れてくれた、といった調子。

メキシコではウスネオイデスをクリスマスのキリスト像の飾り付けに使うなど、海外での意外な植物の活用方法には驚かされるのですが、日本のようにおしゃれインテリアグッズ扱いされていることが変なのかなと思ったりします。

植物とどう向き合うか考える機会にも

西畠清順氏の植物に対する姿勢は真剣であるもののどこか独特で、ときにその活動が批判の的になったりします。本書を読むと著者があまり園芸趣味家的に植物を見ていないこと、植物との出会いを楽しみ、最大限に享受しようとしていることが分かってきます。

人が楽しむために植物を利用することを可哀想だと感じることがありますが、園芸的価値の有無に影響され感情の出どころは極めて曖昧です。植物を自分たちが楽しむために利用することを利己的だと思う境界はどこなのだろうと、本書を読み考えたりしました。

そらみみ植物園
著者:西畠 清順
出版社:東京書籍
発売日:2013年7月8日
定価:1,512円
Kindle版:1,210円
ISBN: 4487808081