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植物に関するおすすめのTED動画5選

TED とは?

ted talks

TED カンファレンスは、学術・エンターテイメント・デザインなど様々な分野の人物がプレゼンテーションを行うイベントです。元アメリカ合衆国大統領のビル・クリントンや、ミュージシャンのボノなどの著名人も講演しており、過去の講演は『TED Talks』として動画共有サイトの YouTube で公開されています。

植物がテーマのTED

今回は植物に関係する TED Talk をいくつかご紹介します。イベントの性質上、社会性のあるメッセージが多いのですが、専門家ではない聴衆に向け簡潔にまとめられたプレゼンテーションですので非常に聴きやすいものになっています。

ブリッタ・ライリー「アパートの菜園」

Britta Riley: A garden in my apartment

ブリッタさんはあるとき食料の自給は環境に良いという新聞記事を読み、ニューヨークのアパートの一室で家庭菜園を始めようと思い立ちます。当然、植物を育てるのに必要なスペースがないという問題に直面するわけですが、彼女はそこで諦めることはありませんでした。

ブリッタさんは友人らと共に 2 年かけて使用済みペットボトルを使った栽培装置(窓辺の農園)を開発しますが、いくつかの技術的な課題が残りました。そこで彼女は問題を解決するためにより多くの人達に関わってもらおうと SNS サイトを立ち上げ、オープンソースプロジェクトとして世界中に栽培装置のアイデアを公開したのです。

このプロジェクトは世界中に広がり、多くの人々の試行錯誤とバージョンアップを重ねていきます。日照時間の短いフィンランドでは LED グローライトを追加するなど、地域性に順応するためのカスタマイズも加えられました。

“we just need to ditch the term ‘consumer’ and get behind the people who are doing stuff.”「私たちは消費者という意識を捨て去り、行動を起こしている人を支援しなければなりません」

彼女は一消費者の立場に甘んじることを良しとはせず、協力し合うことで暮らしを改革できることを示しました。

ジョナサン・ドローリ:花が仕掛ける美しい罠

Jonathan Drori: The beautiful tricks of flowers

地球上には花を咲かせる植物がおよそ 25 万種類も存在するそうです。ひとは忘れがちですが、植物が花を咲かせるのは蜂や蝶などの昆虫を誘い花粉を運んでもらうため、つまりは子孫繁栄のためです。この動画では、植物が昆虫と共生関係を築くため進化の過程で獲得した魅惑的な能力が紹介されます。

最も知られた方法は、花蜜をあげるかわりに花粉を運んでもらうという GIVE & TAKE の関係で、さらに飛来する蜂のための着地場所まで提供することがあります。一方で、花弁をある種のメスに似せることでオスを誘うといった、一方的に昆虫を利用する関係も見られます。

本動画で印象深いのは「ダーウィンのらん」でしょう。この植物は長い管状の距(きょ)の中に蜜線を持ち、普通の昆虫は蜜まで辿りつけません。そこでダーウィンは “I guess something has coevolved with this.”「何かがこれと共に進化してきたはずだ」と予想します。

そして実際に 20 cmを超える長い口吻を持った蛾がダーウィンの死後に発見されるわけですが、ある特定の植物と昆虫が、互いに生存競争で有利となるよう足並みを揃えて進化していったなんてドラマチックな関係に思えませんか?

マイケル・ポーランが植物の視点から語る

Michael Pollan: A plant’s-eye view

マイケル・ポーランは『雑食動物のジレンマ』『人間は料理をする』などの著作で知られる食のジャーナリスト・作家です。庭でジャガイモを植えていたある日のこと、彼は自分とハナマルバチの共通点について思いを巡らせます。

「私たち(彼と蜂)は今、特定の植物の遺伝子を広めようとしていて、そして自分に支配権があると思っている。しかし実は、とても賢い種が植物同士の競争に勝ち抜くために私たちを利用しているんじゃないか?ありふれた芝生ですら、文化の下に抑制される自然だとばかり思っていたのに、実は人間が騙されていて、草が刈られることを望んでいるのではないか?」

突拍子のない発想に聞こえるかもしれません。しかし私たちはダーウィンの『種の起源』によって、人間は地球上の生命の一種にすぎないことを知っている筈です。にも関わらず、人間の意識こそが自然界の最高の業績だと根拠もなく信じている。

– “Well, who’s telling me that consciousness is so good and so important?「じゃあ、いったい誰が意識がこんなに重要で素晴らしい物だと主張してるんだ?」
– “Well, consciousness.”「それは意識だ」

マイケルは、人間は植物を一方的に利用する立場にいるという認識を改め、人間と植物のどちらかが勝つというゼロサムゲーム理論から解き放たれるべきだと説きます。講演内で紹介される、他の生物種の視点を取り入れた農場のシステムは大変興味深いものです。

アミーナ・グリブ・ファキム: 目立たぬ植物に秘められた驚くべき神秘性

Ameenah Gurib-Fakim: Humble plants that hide surprising secrets

インド洋マスカリン諸島に生息するターミナリア・アンソクコウノキは、 1 つの植物の中に形や大きさの異なる葉をもつ「異形葉性」で、葉を食するカメに食べられないよう、葉だと認識されないために形を変えて進化したそうです。その葉の抽出物からは人間にとっての病原体となる細菌に対する薬効が得られることが分かっています。

その他に、人間の母乳よりもタンパク質が多い実をつけるアフリカバオバブ、干ばつに強く 98 %までの脱水状態に耐えるテマリカタヒバ(復活草)などが紹介されます。将来これらの植物の研究が進めば、私たち人類が抱える問題の解決に役立つ可能性を秘めているのですが、現在これらの植物は絶滅の危機に瀕しています。

生物学者のアミーナは、生物の多様性が私たちの健康や生存に密接に結びついていることを説きます。

“there is an ancient saying that for every disease known to mankind, there is a plant to cure it.”「昔の諺では、いかなる病気にもそれを治癒する植物が存在するといわれる」。科学によってその有用性が解明されていない植物が絶滅してしまえば、私たちには問題だけが残されるのです。

ロン・フィンリー: 「ロサンジェルス危険地域で菜園造りゲリラ作戦」

Ron Finley: A guerilla gardener in South Central LA

とても挑発的な演題で、ロンさんは立ち振る舞いもちょいワルっぽい男性なのですが、内容は至極真摯です。ロンさんの住むサウスロサンジェルスはアメリカでも犯罪発生率・肥満率・失業率が高いことで知られ、街も空き地だらけなのですが、彼はそこに教育の場や地域を変えるためのツールとして菜園を作る活動をしています。

“Just like a graffiti artist, where they beautify walls, me, I beautiful lawns, parkways.” 「グラフィティアーティストが壁を美しく飾るように、私は芝生や道路を美しくします」

初めの頃は市の許可無く植物を植えたため、撤去するよう令状が届いたこともあるそうですが、今では多くの人が彼の活動を支持しています。

空き地や道路脇をひまわりなどの花で彩り、ジャンクフードしか食べる機会のない子供達にトマトなどの野菜を育てさせ食の重要性を教える。そうした活動は子供達の成長に驚くべき影響を与えるそうです。

子供達が貧困から抜け出すことのできる土壌を作るため、彼はシャベルを握ります。