ニュース

温暖化の影響?富士山頂の周辺で新たな植物の生育が確認される

富士登山の経験がある方なら、山頂付近は砂利や岩ばかりで植物は全く生えていないというイメージを持っているのではないでしょうか。

これまでは標高 3,000m を超えると種子植物が生育することは難しくなり、地衣類と苔類しか見られなくなると言われていました。しかし近年はいくつかの種子植物が山頂付近に生育し、その中には外来種も含まれているそうです。

温暖化の影響?富士山頂の周辺で新たな植物の生育が確認される

温暖化により変わる植物の生息域

近年温暖化の影響によって植物の生息域に変化が出ていることが知られていますが、私達の住んでいる国内の平地においては身の周りに自生する植物の変化を感じるほどではなく、桜の開花時期が早くなったというニュースを目にする程度ではないでしょうか。

高緯度・高地ではこうした変化が顕著で、これまで見られなかった植物が定着するといった事例が報告されています。

富士山頂付近で生育する植物

富士山の 5〜6 合目あたりまでは草木や花を多く見ることができますが、標高 2,500〜2,800m 以上、高木が生育可能な限界線である「森林限界」を超えると途端に植物の姿はまばらになります。

森林限界以上の標高では、北海道や本州の山岳部に分布するヤナギ科のミヤマヤナギ(ミネヤナギ)など、耐寒性のある限られた種しか生育することはできません。ちなみに、森林限界を超えた標高に生息する植物を高山植物と呼びます

そして近年、種子植物は生育できないとされてきた富士山頂(3,776メートル)周辺で、イネ科のイワノガリヤス、ナデシコ科のイワツメクサなどの植物の生育が確認されています。中には、外来種のイネ科ナガハグサも確認されているそうです。

温暖化による富士山の気温上昇が原因?

国立極地研究所の研究(縮小する富士山の永久凍土 1970 年代以降の変化-)によると、山頂の平均気温は1976 年から 2007 年の間に約 1.1℃ 上昇しています。

富士山の永久凍土も観測以来縮小し続けているそうですが、これは温暖化だけが原因ではなく噴火によって形成された富士山頂部表層の岩の性質も影響しているのだとか。いずれにしても富士山頂ではこの数十年で環境が大きく変わりつつあるようです。

とはいえ現在も富士山頂の月平均気温は夏を除くと氷点下になり、登山者に付着した種子が夏季に発芽するとしても過酷な環境下で越冬する植物の生命力には驚かされます。

いつか山頂付近でも緑を楽しむような富士登山ができる日が来るのでしょうか。