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倫理観とのせめぎあい、大麻の産業活用はどこまで進むか

大麻の利用解禁

2016年4月20日、カナダのジェーン・フィルポット保健相は世界の薬物問題に関する国連の特別会合で、2017年春にマリファナの嗜好品としての利用を合法化する予定だと表明しました。

マリファナはカナダを含む多くの国で禁止薬物として規制されていますが、これらは過剰に厳しく実効性も低いとの見方があることを合法化の理由として挙げています。

カナダでは医療用大麻はすでに合法化されており、自動販売機でも購入が可能なほど。実際に医療に用いられているかは確認されておらず、実質は以前から解禁状態だったと言えます。カナダでは国民約 3500 万人のうち、100 万人がマリファナの常用者であるとの統計データもあります。

進む大麻の利用解禁

アメリカでは 2012 年にワシントン州の住民投票で私的使用が合法化、2014 年にはコロラド州で娯楽用大麻の販売が解禁されています。

アメリカで大麻解禁が進む理由としては、健康な大人が使用する分にはタバコやアルコールと比べても大きな問題にならないことのほか、マリファナによる逮捕者は若年層の黒人男性に偏っており、潜在的犯罪者を育てることに繋がっているためと言います。

しかし現実には大麻を産業活用したいという思惑が透けて見えます。コロラド州では州外や外国からの観光客向け「大麻ツアー」が盛況で、2015 年の大麻関連の税収は 1 億 3,500 万ドル(約 161 億円)を計上しました。

全米の市場規模は 2016 年には 63 億ドル(約7,043億円)に、2020 年までには 250 億ドル(約2.8兆円)に増える [ 1 ]米国で急拡大の「合法大麻」 市場規模は6500億円に – Forbes JAPAN 2016/04/27 という予想もあります。

日本における大麻利用

海外では大麻の合法利用が見直されていますが、日本では諸外国とは事情が異なり、医療面の有用性や健康被害そのものよりも大麻の利用がきっかけとなってより依存性の高い薬物に手を出す危険性が危惧され、規制緩和は当面検討もされないのではないでしょうか。

ヘンプオイル

日本での大麻の利用は、陶酔成分が含まれる葉や花以外の部分を服飾の素材や食用として用いることが殆どです。薬物利用と区別して大麻とは呼ばずに麻・アサ・ヘンプと表現されます。

例えば、種子(麻の実)には陶酔成分が含まれていないため、七味唐辛子に含まれているなど食用として販売されています [ 2 ]栽培できないよう、発芽不能処理の上販売される 。特に麻の実からとれる油「ヘンプオイル」は最近人気を集めたえごま油のように、その高い栄養価からスーパーフードとして注目されています。

日本では品種改良により陶酔成分を極力含んでいない種を栽培、産業に利用しているのですが、それでも国内での栽培許可取得はかなり難しいそうです。産業面での利用価値は非常に高い植物であるのに、薬物としてのイメージから十分に活用できないとすれば残念なことです。

   [ + ]

1. 米国で急拡大の「合法大麻」 市場規模は6500億円に – Forbes JAPAN 2016/04/27
2. 栽培できないよう、発芽不能処理の上販売される