近年、九州では鹿児島県より福岡県の桜の方が先に開花する、といった南下現象が発生しています。
地球温暖化の影響で桜の開花メカニズムに狂いが生じているためと見られており、このまま温暖化が進行した場合、九州南部の桜の開花はより遅くなっていく可能性があるそうです。
なぜ温暖化で開花が遅れるのか
桜は夏から秋にかけて翌年の花芽を作ります。気温の下がる秋口から休眠に入りますが、冬の寒さに花芽がさらされることによって休眠から目覚めます。これを「休眠打破」といいます。
つまり桜が開花する条件として冬の寒さがあるのですが、もともと暖かかった九州南部の気温が上昇したことにより、休眠打破に必要な気温まで下がらないため開花が遅れがちになっていると考えられています。
2005 年の気象庁の発表によると、全国平均ではこの 50 年で 4.2 日サクラの開花が早くなっています。日本の平均気温は 1898 年以降では 100 年あたりおよそ 1.1 度上昇 [ 1 ]日本の気候の変化 – 気象庁 していますが、九州・山口県の年平均気温は 100 年あたり 1.67 度上昇しており [ 2 ]「九州・山口県・沖縄の気候変動監視レポート 2013」の公表について – 福岡管区気象台、沖縄気象台および長崎海洋気象台 、温暖化の影響が顕著に現れていると言えそうです。
本州の開花タイミングが変わる可能性も
今のところ南下現象が見られるのは沖縄と九州のみで、その他の地域では桜前線は北上しています。
ですが温暖化の進行によって九州南部の開花時期はさらに遅れていき、九州北部から関東にかけての地域が3月末に、九州南部と東北の南部が 4 月に同時に開花するようになるとのシミュレーション予測も出ています。
もし温暖化が止まらないのであれば、将来の桜前線は私たちの知っているものとは大分変わったものになりそうです。
紅葉の始まりにも遅れ
温暖化の影響を受けるのは桜だけではなく、カエデの紅葉時期にも変化が生じています。
紅葉のメカニズム
カエデの葉は緑色の色素「クロロフィル」と黄色い色素「カロチノイド」を持っており、春・夏の間はクロロフィルの含有量の方がずっと多いため葉は緑に見えます。気温が低くなってくるとクロロフィルが分解され、新たに赤い色素「アントシアニン」が大量に作られます。残ったカロチノイドとアントシアニンの含有量のバランスにより、葉が黄色から橙まで変化します。
秋口に気温が下がらない場合、クロロフィルの分解やアントシアニンの生成が抑制されるため紅葉が始まりも遅れてしまいます。全国平均では、この 50 年に 15.6 日も紅葉の始まりが遅くなっているとのことです。
1. | ^ | 日本の気候の変化 – 気象庁 |
2. | ^ | 「九州・山口県・沖縄の気候変動監視レポート 2013」の公表について – 福岡管区気象台、沖縄気象台および長崎海洋気象台 |