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琵琶湖からハスが消えた・・・国内最大級のハス群生地で何が起きたのか

ハスが消えた琵琶湖

例年であれば湖上一面にハスの花が咲く烏丸半島だが、ハスは姿を消している | 草津市観光物産協会

滋賀県草津市・烏丸(からすま)半島の琵琶湖岸は国内最大級のハス群生地として知られており、毎年多くの観光客が湖面を埋め尽くすハスの葉鑑賞に訪れていました。しかし今年はハスの葉が全く見られないという異常事態が発生しています。

ハスが消えた原因はいまのところ特定できず

7 月下旬に県自然環境保全課や市公園緑地課などの職員らによって行われた湖底の調査では、地下茎の多くに腐敗が見られました。担当者は「食害や病気、寿命などが考えられるが、特定できない」として、専門家と相談した上で今後も調査を継続していくとしています。

ミドリガメやオオバンによる食害説

増加するミドリガメ

原因として考えられるのはミドリガメ(アカミミガメ)などの外来種による食害です。ミドリガメは抜群の繁殖力を誇り、今年 4 月の環境省による推計では、日本国内の固有種のカメのおよそ 8 倍にあたる約 800 万匹まで増加しているとされます [ 1 ]全国の野外におけるアカミミガメの生息個体数等の推定について – 環境省 

2007年には佐賀市佐賀城公園の堀においてハスが全滅したことがあり、その原因はミシシッピーアカガメの食害とされています。ミシシッピーアカガメは縁日などで「ミドリガメ」として販売されており、飼育に飽きた飼い主によって堀に放流されたことで急激に繁殖、餌として柔らかい新芽や浮き葉を食べたためハスが死滅したと考えられています。

冬に飛来するオオバン

冬に琵琶湖に飛来するオオバンの群れ。白い額とくちばしが特徴。

ミドリガメの他に、雑食性の冬の渡り鳥オオバンの飛来数の増加も一因として挙げられます。約 10 年前の飛来数は 2 万羽にすぎなかったオオバンですが、2016 年の 1 月に行われた調査では 4 倍強の 8 万 5 千羽に増加していました [ 2 ]平成27年度滋賀県ガンカモ類等生息調査結果について – 滋賀県 。急速に飛来数が増加した原因は中国の環境汚染から逃れるように続々と日本へ「移住」しているためと見られています。

ハスが突然死滅した事例

これまでにも日本の各地でハスが突然減少したり、姿を消した事例はいくつか確認されています。

気象条件の変化によるもの

2010 年、福岡の舞鶴公園の堀で生育していたハスが半減する事態が起こりました。調査の結果、夏に局地的な集中豪雨に見舞われたために堀の水位が最大 70 センチ上がり、水面に浮かぶはずの葉が3日間にわたり水没していたことが原因と判明しています。

ハスは水面上の葉の表面から取り込んだ酸素を水底の地下茎などに送っているのですが、初夏の葉の高さは水面から数十センチしかないため、葉が長時間水につかることで呼吸ができなくなります。

さらに、舞鶴公園でも外来種のカメの繁殖が見られたことから、酸素不足で弱った状態の芽をカメが食べたことが追い打ちとなったと見られています。

食害によるもの

京都大覚寺の名勝大沢池では、1988年に水草の除去のために水草を食べるソウギョ(草魚)を池に放ったところ、ハスの茎まで乱食したためにハスが全滅。ソウギョを駆除する騒動となりました。

佐賀城公園では2007年にお堀のハスが減少。佐賀大学の研究者らが水質調査や土壌調査などを行いましたが、原因は濠で繁殖したアカガメ。カメが入ってこないよう保護柵で区分けしたエリアでは元気よくハスが咲いたのだとか。

懸念される観光業への影響

草津市では、毎年ハスの開花に合わせて上空からハスを観察する「熱気球フライト」や群生地周辺を船で巡る「ハスクルージング」、ハス祭りを開催してきました。近年参加者は増加しており、昨年のハスクルージングの参加者は 1,300 人にのぼります。

今年はクルージングの船の数を増やす計画もありましたが、メインのハスが見られないことで参加者は激減。来年以降もこの状況が続くようであれば、草津の観光業への打撃は深刻なものになります。

ハスの群生は蘇るのか

琵琶湖のハス

今後草津市ではハスの種を使って苗の育成などを試みるとしていますが、移植可能になるまで成長するには通常 2 年はかかる見通しです。かつてのハスの群生を蘇らせるため、一刻も早い原因の究明とハスの再生に向けた取り組みが求められています。

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