ウォーリック大学が eLife 誌に発表した研究結果によると、植物は子孫が環境の変化によって受ける影響を軽減できるよう、ストレスに晒されたときの記憶を保持することができるそうです [ 1 ]Hyperosmotic stress memory in Arabidopsis is mediated by distinct epigenetically labile sites in the genome and is restricted in the male germline by DNA glycosylase activity – eLife 。
DNA に記憶されるストレス情報
研究チームはシロイヌナズナを用いた研究において、高塩分の過酷な環境下で栽培されたシロイヌナズナの感じたストレスが DNA 上に記憶されていることを確認しました。この記憶は同様のストレスの反復によって強化され、主に母系を通じて子孫へと継承されます。
研究を主導したグティエレス・マルコス博士は、この短期的な「ストレスメモリ」は植物ゲノムの特定の遺伝子領域が DNA メチル化 [ 2 ]DNAメチル化 – Wikipedia によって後成的に修飾され、次世代へ伝達されることを明らかにしました。
また、ストレスが存在しない環境下ではこのストレスメモリは徐々に失われていきますが、DNA メチル化を初期化する遺伝子を変異させることによりストレスメモリを固定化する方法も発見されています。
ストレスに強い次世代作物の開発
この技術を応用することで、気候変動による気温上昇に耐え、様々な環境下で成長が可能な作物の開発が期待できます。農業に適さないとされる気候の地域でも、作物を植えることができるようになるでしょう。
マルコス博士は「この植物が持つメモリを操作して、より環境の変化に強い作物を生産するためにメモリ内の知識を翻訳することが次のステップだ」と述べています。