桜も見頃を過ぎ温かい日が連日続くようになるこの時季、待っていたとばかりに空き地や道端に咲く花々や群がる蝶を見るといよいよ春が来たことを実感します。
タンポポや菜の花などの黄色い花はよく目に止まりますが、ここでは青や紫の小花に注目していくつかの品種を紹介してみたいと思います。
紫は「高貴な色」「感受性豊かな色」のイメージであり、また気分が昂揚する「赤」と沈静の「青」が混同された「二面性を持つ色」でもあります。
ムラサキハナナ

ムラサキハナナの群生
美しい薄紫の花を咲かせるムラサキハナナ(オオアラセイトウ)。群生し一面が紫に染まった光景は圧巻。
花に観賞価値があること、越年草で冬から春にかけて成長し草丈は 50cm 程度であることから積極的に駆除されず、こぼれ種から年々群生を大きくしていきます。原産は中国大陸ですが、現在では全国の野原や公園の空き地などで見ることが出来る帰化植物です。
若い芽は食料になり、三国志の諸葛孔明が広めたとの言い伝えからショカッサイ(諸葛菜)とも呼ばれます。
オオイヌノフグリ
草丈 10〜20cm ほどの小さなオオバコ科の山野草で、コバルトブルーの 1cm ほどの小さな花を咲かせるオオイヌノフグリ。サイズは異なりますが花はネモフィラに似ています。
コンクリートの隙間などでも強かに繁殖するので雑草扱いされることの多い本種ですが、鮮やかな青が散りばめられたように広がる様は晴れやかな気持ちにさせてくれます。
余談ですが、オオイヌノフグリの名称は近縁のイヌノフグリと似ていることからつけられました。イヌノフグリというのも、実が雄犬のフグリ(陰嚢)に似ているためという気の毒な由来があります。
ツタバウンラン
オオイヌノフグリと同じオオバコ科のツタバウンラン。匍匐性でつるを伸ばし繁殖し、春に薄い紫色の唇形の花(筒状の花弁の先端が唇のように上下に分かれた花)を咲かせます。
掌状に 5〜7 裂した常緑の葉も可愛らしく、ハンギングやグランドカバーにもおすすめです。
カラスノエンドウ
カラスノエンドウ(ヤハズノエンドウ)は 10 ~ 15mm ほどの赤紫色の花を咲かせます。花はマメ科によく見られる蝶形で、上に 1 枚目立つ大きな花びらがあり(旗弁)、その下に 4 枚の花びらが組み合わさっています。
花後にできる豆のさやを笛にして遊ぶことができ、シービービーという呼び名で親しまれてきました。このカラスノエンドウには蟻が群がっていることが多いのですが、花だけでなく葉の付け根にも蜜腺を持っており、受粉のためでなく葉の食害を避けるために蟻をボディーガードとして呼んでいるのだとか。
ホトケノザ

ホトケノザの花
シソ科の越年草で、紫色の唇形の花を咲かせます。下唇にあたる部分に濃い赤紫の斑点があり、虫たちに蜜のありかを示す蜜標(ネクターガイド)になっています。
ヒメオドリコソウ
ホトケノザと見た目のよく似ている花に、同じシソ科のヒメオドリコソウがあります。ヒメオドリコソウは花の色がピンク色をしており、葉の形がホトケノザと異なり先端が尖っていますが、花期と生育環境が同じであるため、混じって咲く様子をよく見かけます。
ツルニチニチソウ
ニチニチソウに似た淡い紫色の花(または白色)を咲かせる、つる性のツルニチニチソウ。耐陰性があり、日陰でも旺盛に繁殖する剛健な品種です。
一斉に開花しないため、3 月から 6 月頃まで長い期間咲いている姿を見ることができます。